〇橋を架けよう(10)
2.10 部材構成
橋の構造は、鉄材の組み合わせで構成されるトラス構造ですが、構成する各部材の構造は、使用される場所(加わる力)によって異なっています。
今回の上路トラス橋は、大井川鉄道 井川線 関の沢橋梁をモデルとしています。これは、私のお気入りの橋梁であるということが一番の理由ですが、古くからある橋で、部材構成を示す資料(写真)がたくさん得られると言うこともあります。道路橋だと、路盤が道路面になっているため、構造は見えにくい、鉄道橋でも、車体から頭を出せるようでなければ構造まで写っている資料はなかなかありません。関の沢橋梁は昔から景観を売り物としており、写真も多くありました。
同規模の橋梁としては黒部峡谷鉄道がありますが、好みは、やはり関の沢橋梁でしょうか。
前置きが長くなりましたが、資料から作った、部材構成を下図に示します。
橋は同じ部材で出来ているように見えますが、いろいろな構造の部材からできています。
関の沢橋梁では、主に以下の6種類の部材からできています。
部材① チャンネル材を向かい合わせにして、プレートで繋いで矩形にしたもの
部材② 板材をプレートで繋いで、H形材の中央がはぬきになったもの
部材③ アングル材4本をプレートで繋ぎ矩形にしたもの
部材④ アングル材2本をプレートで繋ぎチャンネル材の中央がはぬきになったもの
部材⑤ T字型材
部材⑥ アングル材
同じ部材で作ってもよいように感じますが、強度を満足したうえで、部材の総量を少なくする(はぬきにした分軽くなる)、また、小さく軽量な部材を現地で組み立て部材を作ることによって、現地での運搬、使用する工事用機材を軽量にするというなどの利点があります。
では、これらの部材がどこにどのように使われているかを次の図に示します。
同じ図には、使用部材の曲げ荷重にテスト結果も示しています。長さ8cm、断面5×5mmの部材の中央に100円玉で荷重を掛け、耐えられなくなった状況と枚数を示しています。これによると、橋の側面の主要構造は最も強度の強いものが、側面の斜め材は次に強い部材が使用されています。つまり、この橋は、側面の部材が主な荷重を分担しているということが判ります。
部材の強度には、部材の軸方向の圧縮・引張、ねじり、曲げがありますが、簡単にできる試験として、曲げ試験を行っています。部材の強度については、断面2次モーメントなど材料力学に詳しく書いてありますので、詳細はそちらをご覧ください。
次の図は、同じように見える材料ですが、片方はしっかりと接着、もう片方は間を空けてわざと欠陥を作ったものです。
欠陥があると、強度が落ちることが判ります。材料の欠陥が構造体の強度に影響することを感じてもらえると幸いです。
次は着手に向けた事務処理について説明します。